グリーンツーリズムの里へ。水俣市編


大川集落風景

いま、グリーンツーリズムという言葉が広く認知されてきています。
この言葉を日本で提唱した農林水産省によれば、農山漁村地域において自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動ということ。 考え方として、田舎に住む人々と都市住民が交流し、地域の自然や文化のすばらしさを体験するということです。
このグリーンツーリズムを過疎化や観光資源に乏しい地域が取り入れることで、その土地を元気にする取り組みが全国で盛んに行われているのです。

そうした地域の中から、平成21年度に総務大臣賞を受賞した地域を紹介します。
熊本県水俣市。
かつて水俣病という深刻な公害を経験し、地域の農業や観光産業などが疲弊、長い間苦しい時代を経験してきました。
そうしたイメージが先行する水俣市ですが、もともとこの地域は熊本県の最南端に位置する、海と山に囲まれた美しい場所。
その水俣市はいま、環境都市としてグリーンツーリズムで活力のある活動を続けているのです。
水俣市は平成13年に「水俣市元気村づくり条例」を制定、その条例に基づいて、地域の自然・産業・生活文化を守り育てる「村丸ごと生活博物館」に4地区を指定しました。指定されたのは、市内の人にもあまり知られていなかった山間の集落である頭石(かぐめいし)、久木野、大川、越小場(こしこば)の4つの地区です。

僕はこの「村丸ごと生活博物館」というコンセプトに惹かれました。水俣市の山奥にある小さな集落全体を“屋根のない博物館”と見立て、訪問者に対し美しい自然環境や地元の生活文化を、住民自らが案内する取り組みです。水俣市ではこの4地区でこれまでに、国内外から約9,000名の訪問者を呼び込むことに成功しているのです。
そしてなんといっても、地元の人たちに意識の変化が生まれたことが大きいと思います。訪れた人が美しい自然や美味しい食文化に感動する姿を見て、地元の人が自分の土地の良さを再認識する。その誇りを胸に代々伝わる村の歴史や生活の知恵などを訪問者に教えているのです。

頭石

案内役をつとめるのは、市から認定された生活学芸員。そのほかにも漬け物、野菜づくり、木工などの技術をもつ生活職人の方たちが訪問者に技術を伝え、謝礼として1人あたり1,000円をもらいます。
この取り組みの中でも訪問者に特に人気なのが、食めぐり。「村丸ごと生活博物館」は各地区に加工所があり、地元で採れた食材を使った家庭料理を味わうことができます。そのあまりの美味しさにレシピを教えてほしいという訪問者の要望に答えて、地元の主婦がレシピ集を作成し、本を市内の書店で販売したところ、1,000冊以上売れた地区もあるそうです。また訪問者が村おこしに参加できることも大きな特徴で、日本の棚田100選に選ばれている久木野地区では、毎年田植え前の棚田に2,000本のたいまつを並べるイベント「棚田のあかり」を開催、多くのボランティアを集めているそうです。こうした「村丸ごと生活博物館」の活動を視察しに、海外からも人が訪れるという広がりにつながっています。世界中から来た外国人と水俣市の村の人がふれあう光景は、ある意味都市部より国際的な場所といえるのではないでしょうか。

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都会の人は日常では味わえない体験をし、迎える村の人は自然環境の保全に力をいれ、訪問者のホストとして副収入を得ることができる。これはまさしく成功している日本のグリーンツーリズムであり、僕が思うエキサイティングな地方のひとつの形です。水俣市のHPに掲載されている訪問申し込み方法には、次のような一文が記載されていました。

「かしこまった案内ではありませんので、親戚の家に遊びに行くような気持ちでお越しください」

水俣市のグリーンツーリズムは、公害で苦しんだ過去の歴史を塗り替えていくでしょう。そして「村丸ごと生活博物館」の4地区に移住し、生活を始める若い家族が村を引き継いでいく時代がやって来ると思います。
日本国内には水俣市と同様の過疎集落を抱えた地域がたくさんあり、“屋根のない博物館”を参考にすることができる地域がまだまだたくさんあるような気がします。

水俣市役所「村丸ごと生活博物館」HP http://www.city.minamata.lg.jp/423.htm



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