田舎での仕事~理想と現実~

移住する前から田舎での仕事についていろいろ書いてきたが、当時は人やメディアの情報から得たことや希望的観測を含んだ内容もあった。

那須町の里山に住んで1年半。移住前と比べて、実際の田舎生活はどうなのか。
とくに気になる田舎での仕事の仕方に焦点をあてて、考えてみたい。

まず、都会から田舎に引越して、どういう働き方ができるのか、僕の住んでいる那須の生活環境に当てはめて整理してみる。

1.勤め先の多い街に通勤して働く
僕の住んでいる里山だと、黒磯まで車で20分、宇都宮まで1時間ちょっと。距離は離れていても、都内のように交通量が多くないから、1時間で走れる距離が違う。たとえば介護士や薬剤師など、どんな地域でも活かせる専門スキルがあると、転職に有利だ。一方、仕事は変えずに那須塩原駅から新幹線で都心まで通勤している人も結構いる。東京駅までは70分でアクセスすることができる。

2.二地域居住で週末田舎暮らし
那須高原の別荘に、週末だけ都市部から田舎に来て過ごす。普段、都市部で働いているので、週末に田舎へ向かうことが毎回新鮮で楽しい。ただし都市と田舎のいいとこ取りな部分があるので、地域のコミュニティに入っていくことはやや困難。フリーランサーなど、平日と週末の垣根なく、田舎で仕事をする人もいるかもしれない。

3.観光産業や第一次産業に従事する
那須高原は観光地なので、ホテル・旅館業やアミューズメント施設への就職、僕の住んでいる里山エリアでは新規就農する道がある。伊王野地区はかつて林業が盛んだったが、現在は衰退している。農業をやりたい人なら、県の農業大学校に通うなど、支援制度を活用しながら就農を目指すのも手だ。

4.役場職員になる
実は町の一番大きな就職先。地元や近隣の市町村出身の人が多いが、他県からの移住者も就職している。

5.フリーランサーとして自宅で仕事をする
どんな田舎に住んでいても、ネットインフラさえあれば、PCで仕事をすることができる。もともとの専門職がある人なら、ワークライフバランスを自分でコントロールしながら生活できる。クラウドワークスなど、ネットを介して企業とクリエイターをマッチングするサービスが近年は注目されている。ただし、仕事の単価が安い傾向にあるので、これ一本で生活をしていくには、たくさん仕事量をこなす必要がある。

移住する前、僕はよくこんなことを書いてきた。

・仕事は自分でつくる
・仕事と私生活を近づけていく
・小さい仕事を組み合わせた百商的な働き方を目指す

理想として掲げていた生き方・働き方をずっと根底に持ち続けているつもりでも、自分の中で価値観のせめぎ合いがたびたびある。「それで食べていけるの?」という気持ちの波が押し寄せてくる。
だから「これをやれば食べていけるかも」という頭にいつの間にかなっている。それは必ずしも「やりたいこと」ではない場合がある。だから仕事のアイディアが出て来たとき「本当にそれは自分がやりたいことか」と徹底的に考えてみることだ。

仕事ってなんだろうか。
勤め先があり、安定した給料がもらえること?
その視点から考えると、田舎に仕事は圧倒的に少ない。

だけど実は、田舎には事業化されていない仕事がたくさんある。
自分にもできそうなことで、しかもニーズがあるのに、担い手がいない。そういう仕事の種は、結構転がっている。だから地元のニーズを考え、それを満たすことを考えていけば、それは仕事になり得る。

たとえば、送迎サービス。
高齢者の多い地域であれば、ニーズは高い。

たとえば、飲み屋。
お酒が好きな人は多いけど、お店が少ないから意外とハードルは低い気がする。
そんな馬鹿な、と思うかもしれないけれど、僕の地域では一番稼ぐ道筋が想像できる。車がないと成り立たないから、送迎のサービスを付け加えれば、なおいい。

たとえば、お弁当の宅配サービス
ひとりで住んでいるお年寄りなどにお弁当を宅配するサービスはどうだろう。1日に10件、500円のお弁当を宅配する。美味しくてリーズナブルであれば、口コミで拡がり、1日に30件の注文が取れるようになれば、立派な仕事として成り立つ。

仕事は自分でつくるという発想を持ち続けていると、いつかアイディアが向こうからやって来るかもしれない。

社会課題解決型の仕事をテーマに事業化することには、大きな可能性がある。だけど、何もそういうことだけが仕事ではない。

移住前には気づかなかったことがある。
田舎では、都会に比べてお店を立ち上げやすく、たたみ易いということ。
始めるのに、準備資金はさほど掛からない。

田舎は広大な土地や建物が安く借りられる。空き家をできるだけ自分で改装すれば資金は安く済む。そこにオシャレでリラックスできる店舗空間を演出できれば、遠くからも人が訪れるかもしれない。美味しいパンが焼ける、ケーキが作れる。珈琲が提供できる人なら、都会で開業するよりリスクが少なく、身の丈に合ったお店を作れるのではないか。実際、僕の周りには小さいけれど、自分のやりたいお店を始めた人が結構いる。
もし、お店をたたむにしても、開店のために高額な借金などしなければ、やめるときも傷みは少ない。
ひとつの仕事で生計を立てるという発想ではなく、いくつもの小さな仕事の種を育てていく。

東京にいるときは、自分でお店をやるということなど、考えてもいかなかった。
始めるハードルは低くても、それを軌道に乗せていくことは簡単ではないだろう。それでも「やりたいこと」を思い続け、努力を惜しまなければ道は開けてくるはず。最も大事なのは、夫婦の間でよく話ができ、同じ方向を向けるかどうか。というより、むしろ一緒に楽しめるかどうか。
そこさえクリアできれば、あとは自分を信じて、踏み出すだけだ。


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