前編―KENPOKU ART2016 茨城県北芸術祭に行ってきた。


1日目 山のアート作品を訪ねる

自分の住む町の隣県で、芸術祭が開かれる。
そう知ってからずっと気になっていた。

『KENPOKU ART2016 茨城県北芸術祭』(以下、ケンポク)。
芸術祭の魅力に気づいたのは、新潟県十日町で開催されるアートトリエンナーレ「大地の芸術祭」を訪れてから。過疎化した山村集落を巡りながら、空き家や廃校の校舎など、里山とその資源をアートへと昇華させた国内外の作家の作品に触れることができる。

過去にいくつか芸術祭の記事も書いてきた。

◎大地の芸術祭
新潟県十日町市〜大地の芸術祭に行ってきた 前篇〜

新潟県十日町市〜大地の芸術祭に行ってきた 後篇〜

◎瀬戸内国際芸術祭
瀬戸内の島々をめぐる

豊島に行ってきた。

豊島の魅力について。

今回、1泊2日の旅を計画して、栃木県から茨城県へと車で向かった。プランは初日に山エリアの作品を巡り、2日目は海岸線に沿って海側の作品を訪ねるというもの。那須から大田原市、那珂川町へと南下し、一番近い茨城県の大子町へと入る。

最初に向かったのが、旧上岡小学校。明治12年に創立した古めかしい木造校舎は、学校としての役目を終え、TVやCMのロケ地としても利用されている。

歴代校長の肖像や児童の作品が掲げられた講堂には、田中信太朗の作品があった。1970年に発表したこの作品は、黒い水面が高度成長期に道路の舗装で使われた強い臭いを放つコールタールで、美しくも社会への批評を込めた作品だったそうだが、今回は墨汁で再現している。
当時込めたストレートなメッセージとしては、いささか薄まっている気がしたが、却ってさまざまな解釈ができるかもしれない。古い講堂と静謐な作品とのコントラストも面白い。

「やっぱり現代アートのインストレーションはいいな」と思う。

ケンポクは海と山の自然に加え、科学技術もテーマのひとつになっている。
チームラボに代表されるメディアアートの作品も今回展示されていた。だけどやっぱり僕はインスタレーションアートが好き。メディアアートは先端技術を駆使してスペースに異空間を構築し、人を驚かせる。
それは「すごい」ものだ。しかし、誤解を恐れずにいえば「すごい」ことが必ずしも感動を呼び起すものではないと思う。

常識に対して疑問を投げかけるような作品や、身の回りの生活環境や自然をモチーフにした作品が自分は好き。それも押しつけがましくなく、そっと気づかせるような作品に感動する。

大子町から東へ常陸太田市、日立市と移動する。そろそろ山から海へとバトンが渡される頃。
そして初日最後となった山エリアの作品は、この日のクライマックスだと感じられた。神聖な静けさに包まれた御岩神社に2つの作品が展示してある。

特に、芸術祭らしい作品として惹かれたのが、森山茜の「杜の蜃気楼」という作品。杉林の間を縫うように、空中を漂う物体は、6,000枚の極薄のフィルムで、山頂から下へと吹いてくる風によってヒラヒラとなびき、生き物のようにも見える。その存在感に圧倒された。
パワースポットとしても有名な御岩神社。場所がもつ空気と一体となった作品は、その場でしか生まれないもので、芸術祭の大きな魅力だと思っている。

最初にケンポクの「海か、山か、芸術か?」という直球のキャッチコピーをみたときは「なんじゃこりゃ?」と思ったが、県内を巡るうちに、じわじわとこの言葉が身に染みてくる。山を走り、海岸線を走りながら、ちらちらと頭の中に浮かぶ「海か、山か、芸術か?」。
素直で気取らないことが茨城県の魅力だとすれば、このコピーがどこか愛らしく思えてくる。

>>後編につづく



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