第4回 非電化の家づくりを考える


那須に非電化工房という私設のテーマパークがある。
先日、このテーマパークに、非電化カフェがオープンしたというので、両親を連れて遊びに行ってきた。

非電化工房を作ったのは、日本大学の客員教授で工学博士の藤村靖之先生。非電化による環境技術が専門で、これまでに非電化の冷蔵庫や除湿器など、多くの製品を発明されてきた方だ。テーマパーク内には住み込みで働くお弟子さんたちが修行しながらスキルを磨き、一から建てた家や有機の畑などが広がっており、自給率を高める暮らしの実践と発信をしている。

非電化とは、その名のとおり、電気エネルギーを使わないこと。私たちの家の中にはさまざまな家電製品があるが、それらが電気を使わずに使える道具だとしたらどうだろう。ごはんを作るため、音楽を聞くため、明るい部屋で夜を過ごすために費やす時間と仕事量は、増えるはず。だけど、その代わりに得ることもきっとある。

それは、自分の手で工夫する楽しさと技術の習得。電力会社の都合に振り回されない暮らしのアイデンティティ。もちろん、生活コストも減る。そうしたことは、きっと丁寧な生活に繋がる気がするのだ。

藤村先生は、ある日この私設テーマパークを作ることを思い立ち、2007年に逗子市から那須に広大な敷地を見つけて移住された。思いの背景にあるのは、どこまでも続いていく経済偏重社会への憂いと、真の豊かさを広く社会へ問いかけていきたいとの思いがあるからではないだろうか。
快適、便利、スピードを追い求めた結果、日本人は本当に幸せになれたのだろうか。収入が増えることが、本当に豊かな人生を送れることに繋がるのだろうか。快適、便利、スピードがどうしても必要な人には不自由に感じるかもしれないが、自給的なマインドとスキルを生活に取り込んでいくことで、生きる実感を得られる暮らしを送っていけるはず。そんな藤村先生の思いが込められたテーマパークなのだ。

僕は那須に非電化工房というものがあるのを知って、勇気づけられた。那須に藤村先生のような方がおられるなら、長く慣れ親しんできた那須という地で、僕が目指したい暮らしができるかもしれないと思った。地域で仲間を増やし、一人では大変なこともみんなで助け合って、一気にやってしまう。そういう小さな社会での暮らしは、お金を払うことで解決するよりも、賢くて楽しい。
そう、楽しいことがなによりいい。

カフェのデッキで、両親とコーヒーを飲んでいると、藤村先生と奥様が来てくださったので、しばらくお話をした。
父は昨年、那須の病院で心臓にペースメーカーを入れる手術をした。その影響で電気カミソリを使うのをやめたが、先生の発明品である、手動のボタンを押し続けることで刃が回転するカミソリを購入した。
藤村先生いわく「回転しているうちに肌から離してくださいね。そうしないと髭が刃にはさまりますから(笑)」。

僕が那須で家探しをしていることを話すと、那須は家も土地も安いから、住まいは本当に安く手に入るとおっしゃっていた。自分も一から家づくりをするのか、または空き家を改修するのかで悩んだが、今は空き家を探そうと考えている。

そう、非電化工房の自給的な取り組みの中で、気になっていたのが、住まいのこと。
藤村先生は現場でお弟子さんとともに家を建て、敷地の施設を増やしていった。もちろん先生のもとで住み込みの修行をするのだが、はじめは大工の経験もない人が建てた小屋や家は、東日本大震災でも倒壊することがなかった。
ハウスメーカーに高いお金を払って家を建てるのではなく、自分たちで家を建ててしまえば、定年まで住宅ローンを払い続けるような生活から解放される。しかも仲間と一緒に建てるので友情も深まる。

空き家はそのまま住めるような状態のいいものは、あまり多くない。だから補修が必要になるのだが、そこで一番気になるのが断熱材の問題だ。那須の冬は氷点下10度になるほど、寒さが厳しい。それなのに昔の家には十分な断熱効果が得られないものがほとんどだ。だからといって、グラスウールのような土に還らない断熱材を、お金を払って購入して敷き詰める気にもならない。アレルギー体質のヨメのためにも、そういう素材のものを使いたくないというのもある。

床の断熱材に対しては、非電化工房で面白いものを使っていた。お米のもみ殻を断熱材として利用するというアイディアである。このもみ殻断熱は、日本では古くから使われていて、京都の重要文化財である桂離宮では、改修のときに床下から数百年前のもみ殻が発見されたそうだ。
また、知人が震災ボランティアで仮設住宅の建設を手伝ったときには、地元の大工さんの指導で、床下にもみ殻を敷き詰めたそうだ。いつかは解体する仮設住宅だから、土に還るもみ殻が都合いいのだ。
こんな風に日本では、お米のもみ殻を断熱材として使うという知恵が昔からある。
僕は空き家の改修のときには、このもみ殻で断熱できないかと考えている。那須の里山では、お米をたくさん作っている。いつか農家さんからもみ殻をいただけるようになれたらいいな。



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