第5回 田舎に家が見つからない


進まない家探しに一筋の光明が

春からスタートしている、那須での家探し。

不動産業者が管理する物件とはまったく違い、基本的に人に貸すことなど考えていない人の空き家を探してきた。だから、どんなに素晴らしい家でも、貸してくれるかどうかは交渉してみなければ分からないから、そう簡単ではない。

ここ2か月ほど、週末のたびに東京から那須に向かい、いろんな人に会うようにしている。
そして、空き家の持ち主を紹介してくれる人を探している。しかし長年住んでいた愛着のある家に、よそ者がいきなり貸して欲しいとお願いしても、まず貸してくれないと思ったほうがいい。だから顔つなぎをしてくれる、地元の方の存在が大切だ。

現地の方々に会いに行き、自分が理想とする家と暮らしをアピールするのだが、皆さんの顔はだいたい似通っている。
「じゃあちょっと人をあたってみましょう」と好意的に言っていただけるのだが、その方自身が見つかる可能性を未知数に感じているのがよくわかる。

那須町にも他の地方と同様に、空き家の数が結構あることはわかっている。だけど、実際に貸してくれる人はどれくらいいるのだろう。しかも、自分たちがイメージする家はその中からどれくらいの数を選ぶことができるのか。あるいは空き家から理想の家を探し当てること自体、そもそも現実的ではないのだろうか。

家探しが停滞して進まないなーと思っていたら、今年のはじめ、偶然知り合うことができた那須町役場の方のことを思い出した。
その方の話では、春から那須町にもふるさと定住課というものがつくられ、移住者誘致の行政サービスを強化していくのだそうだ。
不動産会社のある地域には空き家バンク制度が少ないと聞いていたので、あまり期待はしていなかったのだが、一応行政サービスの詳細を問い合わせてみた。

なんでも聞いてみるものだな、とその時思った。
なんと那須町もいよいよ空き家バンクを開始するらしい。

いままで自力で探すことを覚悟していたので、行政が間に入ってくれるのは本当に助かる。
というのも、個人として地元の方に空き家を紹介してもらうときに気がかりなことがひとつあった。
せっかく好意で紹介してくれた空き家を拝見してみて、気に入らなかったときにお断りするのが、申し訳なく感じてしまう。
不動産仲介の内見をしているわけではないので、心が決まらない理由をはっきり説明するのも少し気が引ける。
だけど、空き家バンクは自治体が政策として行う制度なので、ある程度は気兼ねせずに家探しに向き合えそうだ。
なにより、自分の力では出会えない家を見つけることができるかもしれないのだから、期待は大きい。これからどれだけの空き家が登録されていくのかは分からないが、しばらく様子を見ていこうと思った。

住みたい家の譲れない4つの条件とは

一方で、僕自身も那須に足を運ぶたび、気持ちに変化を感じている。
当初は里山暮らしを強く意識していたが、必ずしも里山にこだわらなくてもいいのではないだろうか。那須高原でも、田んぼの広がる農家は点在しているし、もしかしたら不動産会社が管理している中古の別荘住宅だって、気に入る家があるかもしれない。そういう場所でも都会とは比較にならないほど、地元の人たちとの密接なつながりが生まれてくるはずだ。

どんな場所に住みたいかは、どんな生活がしたいのかということに直結している。
那須に通ううちに、理想とする住まいのイメージが整理されてきた。

1.森の中ではなくて、見晴らしのいい開けた場所
2.ご近所さんの家から適度に距離の離れた、そこそこポツーンとした場所
3.庭が広いこと。
4.自分でリノベーションをする余地のある家であること。

この4つが満たされていれば、場所などの条件ににこだわる必要はないのだと思えた。最低限これだけは譲れないという条件を絞らないと、当初の希望があいまいになって、かえって理想から遠ざかっていく気がする。

1は那須への移住を決めたときから、ずっと思っていたこと。那須高原にある僕の実家は森の中の別荘地で、それはそれで美しい場所なのだが、ひとつ残念に感じるのは、見晴らしだ。雄大な那須岳が目の前にあるのに、背の高い森の木々に視界を遮られて、ほとんど望むことができない。やはり遠くのほうで沈んでいく夕日を眺めたり、一面が雪で覆われているような景色を家の庭から見たい、というのが僕の理想だ。

那須で家探しを始めて、実は一番難しい条件だということに気づいたのが2だ。ポツーンとした家というのは、なかなかありそうでない。里山の集落は小高い山の麓に家々が寄り添って建っていることが多いし、管理組合のあるような別荘地は区画割りされた土地に建ち並んでいるからだ。理想はお隣りと100メートル以上離れているといいのだが、いささか贅沢かもしれない。

なぜポツーンがいいのか。理由はふたつ。
近くに人の気配がしないと、人よりも自然の力が増してくる。ときには自然を怖く感じたり、寂しく感じることもあるだろう。それでも、自然のなかで人が生かされていることを日常で感じる意味は大きいし、自活力を高めてくれるという気がする。
もうひとつの理由は、音。東京のように、スタジオに行かなくても楽器の音を出せたり、友達が訪ねてきてワイワイやったりできる。また自分もヨメも、那須に行ったらモノづくりをしたいと思っている。それはおそらく少し音をたてる作業になるから、ご近所さんの迷惑にならない、適度な距離があると嬉しいのだ。
このふたつの理由は、田舎で暮らすことの大きな価値だと思っている。そんな場所が見つかるといいのだが。

庭が広ければ、やりたいことは無限にある。楽しむことに困らない大切な要素だと感じている。
何がしたいのかというと。

畑・造園・小屋づくり・石窯づくり・鶏・薪・プロジェクターで映画鑑賞・自給エネルギー・作品づくり・音楽・BBQ・露天風呂、、、。
まぁ、広い庭が欲しいというのが3だ。

どんな家に住みたいのかというのは、ヨメとずっと話してきたテーマ。おたがいのすり合わせは今も続いていて、少しずつイメージが固まってきている。とにかく家はDIYで好きなようにリノベする。それが可能な家だ。キレイに壁紙が貼られ、断熱材が充填された室内の壁をぶち抜いたり、ピカピカのフローリングの床板をわざわざひっぺがして、素人が家のつくりを改悪する気はさらさらない。だから逆にいうと、キレイな家では困るのだ。
大きな稼ぎがなくても工夫して楽しく生きていく、ということがもともと自分たちの目標だ。
キレイで快適な住まいはおそらく予算オーバーだし、魅力もあまり感じてはいない。だから4も当然必要な条件になってくる。

いまはまだ家が全く見つかっていない。
でも、いつか理想の家が見つかると信じて、那須へ通い続けている。



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