地域おこし協力隊になって思ったこと

僕が地域おこし協力隊になって1年半が経った。
卒業まで3年間活動した場合、ちょうど折り返し地点。これまでに協力隊員として僕が感じたことを書いてみようと思った。

地域おこし協力隊について、入隊した先で必ずしも順調にいかなかったり、悩みがあるケースもけっこう聞く。協力隊員になった経験がある人ならそれはすごく良く分かると思うし、自分に当てはまることも多い。

とくに入隊したての頃は右も左も分からず戸惑うことも多いけど、ある一定の期間を過ぎたら、どこかで乗り越えないといけないと思った。僕はもともと定住するつもりでやってきた。だから地域活動の良しあしを考える前に、いま自分にできることをどんどんやってみようと思った。
この制度の大きな目的が定住であるなら、それを実現するために自分でやることを考えて活動するのは当然のことだ。

その上で協力隊員として自分が感じたことを挙げてみる。

1.自分の本当にやりたいことを見つける
協力隊の募集には「ミッション型」と「フリー型」がある。ざっくりいうと、ミッション型は募集の際に決められた枠の仕事をやりながら生業をつくる活動で、フリー型は自分で活動テーマを見つけていくこと。

僕の場合、ミッション型に当てはまるのだが、今思えば自分はフリー型のほうが合っていたと思う。活動をはじめてみなければ、地域性もそこに住む人のことも分からないからだ。全体像が見えてきてはじめて、自分がやりたいこと、できそうなことが見えてくる。そういう意味ではフリー型のほうが自分には合っていた。

もちろん、ミッション型の隊員としてやるべきことはやっている。ただ、やるべきことの中身はすでに決まっている仕事なので、基本お手伝い。初年度はミッション型の枠の中でイベントもいくつかやったが、卒業後の生業に結び付けられそうなものを見つけることはできなかった。そもそも僕が担当したミッション型の仕事の中には、隊員が企画して発信する活動は求められていなかった。

だからミッションとしての仕事から外れても、自分のテーマを見つけて活動することを平行していかないといけない。協力隊の悩みとしてよく聞かれるのは、3年後が見通せなくて不安という声。募集される活動内容は、必ずしも定住が見通せるような種類の仕事とは限らない。
むしろ地域活動から生業に結びつけることは、仕事の性質上簡単ではないと思う。個人の能力の問題といわれればそれまでだが、僕の知る限りスタート時のミッションをそのまま卒業後の仕事として結びつけられる人は、受け皿が用意されていない限りそう多くないと思う。

活動中に爪あとくらいは残せても、多くの人は仕事として成り立つ方向にシフトしていく。
だから、定住するつもりの人は任期中に本当に自分がやりたいこと、できることを考えておくべきなのだ。

2.協力隊という制度を理解していない人が多い
僕が普段の活動を通じて知り合う人はとても多い。自分のような協力隊を迎え入れてくれ、背中を押してくれる人たちにもたくさん出会った。自分の地域をなんとか盛り上げていきたいと思っていて、お酒を飲みながらいろんな話しができる人たちだ。実はそういうことがすごく大事。いろんな話ができるから地域おこし協力隊がどういうものかを説明できるし、どうすれば地域が面白くなるかを一緒に考えることができる。

地域おこし協力隊のことを知らない人は意外に多い。地域のためにボランティア活動をしている人。臨時職員として、普段の仕事を手伝ってくれる人。一時的に都会から田舎に仕事をしに来た人のように考えている人も結構いる。

協力隊は地域を活性化するために今までの経験を活かして活動する人であることは間違いない。だけど、それに加えて、地域に定住し自ら仕事を立ち上げ、地域に貢献することが目的の制度なのだ。

仕事上で付き合いのある人に「何でこれを手伝わないんだ」と言われたことがあった。その人とは普段しっかり話をしたことがなかったので、いい機会だと思いお店で話をした。その席で僕は協力隊の目的などをしっかりと説明したつもりだ。ただあまり話が伝わらないので、「卒業後はどうしたらいいと思います?」とあえて聞いてみた。
卒業後にどうするかを自分で考えるのは当たり前のこと。ただ少しでも協力隊という制度を理解していれば、隊員が活動として優先すべきことは分かると思う。

活動を通じて知り合う人には、どうすればこの先の活動がうまくいくかを一緒に考えてくれるようなタイプの人と「先のことは分からない。とにかく目の前の仕事を手伝ってくれればいいよ」というタイプの人に分かれると思う。地域おこしは住民の方が主体的に活動をしなければ進まない。協力隊はその手助けをするためにできることを考えるのが仕事だと思う。
「卒業後はどうしたらいいと思います?」という質問に対して、最後までその人なりの意見を聞くことはできなかった。

3.「一緒にやらないか」という人が現れる
協力隊として人に会っていると「一緒にやらないか」という人が必ず現れる。これには両面あって、純粋に活動を応援してあげようと考えている人と、無給で自分の仕事を手伝ってくれることにメリットを感じている人がいる。あるいはその両方かもしれない。
活動の方向性が定まっていないうちは、声をかけられることが嬉しいし、活動の軸となるものが欲しい。だけど一緒にやるかどうかの決断は慎重に考えたい。僕が判断の基準にしてきたのは、こんなことだ。

・人間性が信頼できるか(個人としても付き合える)
・自分のやりたいことに合致しているか(自分にとってもメリットのあることか)
・公共性があるか(地域のためになることに結びついているか)
・隊員の将来のことも視野にある人か

これらがクリアされるなら、特定の人と活動を進めていくのもいいと思う。ただ、協力隊員は自治体に雇用されている。行政の担当課の人とよく話をしてコンセンサスを取っていくことも必要だろう。決められたミッションがある場合には、とくに話し合っていくことが大切だ。

4.手に職がある人は強い
手に職のある人は協力隊になるメリットが大きいと思う。
食に関する仕事をしてきた人ならば、イベントなどで地元の食材を使った料理を作ったり、加工食品を開発することもやりやすい。木工作家ならば、地元の木材を活用して親子ワークショップを開催したり、端材を活用した木工製品を作ることもできるかもしれない。専門の技術があることは、自分の活動の支えになってくれる。

そんな隊員ならば、卒業後の起業も心強いだろう。
活動費を開業準備資金として活用したり、卒業後に起業する場合の助成金を使うこともできる。
そして何より、協力隊として培ってきた人とのつながりも大きい。「協力隊の〇〇さんがお店を開くらしい」という話題性もあり、知り合った人たちがお客さんになってくれる。

これは土地勘のない田舎に来て普通に開業する人よりも、かなりのアドバンテージがあると思う。田舎に移住して、仕事を立ち上げるまでの間に準備ができるのは、協力隊になることの大きなメリットといえるのではないだろうか。

最後に、僕も地域おこし協力隊になってよかったと思っている。
人と会うことが仕事でもあるので、1年半という短い期間で多くの人と知り合うことができた。これは協力隊でなければ難しいだろう。いま住んでいる地区の人たちからも、仕事が明確なので信用されやすかったと思う。
地域おこし協力隊になることが目的ではなく、その地域に住むという目的の手段としてこの制度を考えると、協力隊は力になってくれると思う。


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