豊島の魅力について。


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翌朝8時、「てしま自然の家」にあるキッチンで、お湯を沸かしはじめました。
前日に地元農家のオジさんからもらった鶏の卵2コをゆでて携帯し、お腹が空いたときに食べる。東京にいるときはワザワザやらないことでも、食べる場所が少ない島ではけっこうありがたい携帯食になるのです。過去に宿泊者が残していったインスタントコーヒーを淹れて飲み、この施設を訪れた旅行者が書き綴ってきたノートに管理のおばちゃんへの感謝の言葉を残して建物を後にしました。

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向かったのは、昨日休館日で行くことができなかった豊島美術館。岡の上の集落から唐櫃港(からとこう)方面へゆるやかに坂を降りていくと、徐々に視界が開けてきます。バスや自転車でなく、ゆっくりと歩いてきたことが贅沢に感じる豊島の景色。左手には菜の花畑が広がる棚田、前方には瀬戸内の海、そして右手に豊島美術館の白い卵形の建物が一度に見渡せるパノラマビュー。地元の人はなんもない島だよと言うけれど、こんな島の宝があるじゃないですか!

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豊島美術館でチケットを購入し眼下に海を見下ろす庭を回遊すると、白い建物が見えてきます。案内に従って靴をスリッパに履き替え、いよいよ建物の中に入りました。
豊島美術館には絵画や彫刻作品が展示されているわけではありません。外界の自然と室内をつなぐ穴がふたつ開いているだけの広大な半球体の空間です。いくつもの小さな水たまりが床から湧き出て、有機的に地面をすべっていく。人は空間にじっとたたずむだけ。でもそれがすごくイイ。天井に開いた穴からは、鳥類のさえずりが入ってきて、室内空間で拡大され反響します。余計な情報がないから聴覚だけが研ぎすまされ、陽の傾斜によって空間の表情が変わるインスタレーション。残念ながら撮影禁止ですが、むしろ五感で感じる美術館であるため、写真だけですばらしさを伝えるのは、逆に難しい気がします。

豊島美術館を出て、あらためてこの場所の景色を見渡してみました。ここにある棚田は前回2010年に開催された瀬戸内国際芸術祭に合わせ、豊島の3つの自治会や唐櫃(からと)棚田保存会、豊島美術館を運営する福武財団、香川県などが協力して休耕地を再生したものです。「食とアートの島」として豊島の地域活性化を図る事業の1つであり、豊かな農作物と優れた景観を守っていく活動。現地は棚田の中を歩きながら瀬戸内の海を見渡せる散歩道として整備されており、来島者を楽しませてくれます。

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僕が地方移住大作戦をはじめてから、地域活性化を共通項に多くの人と出会い、話をしてみて感じたことがあります。
それはいまの若い世代の感覚というものに、地域復興の可能性があるのではないかということです。都市部で得られる利便性やトレンドよりも、地方でしか食べられない食文化や習慣に関心をもち、農業体験や島暮らしをしてみたいと思う気持ち。これは経済が右肩上がりに成長を続けている時代には、地方の若者にとって疎ましく思われてきたことかもしれません。しかし、いまの若者、とくに都市部の若者の感覚にはむしろ地方の文化や自然を欲している気さえします。
すべてが用意されていて「さぁ、ここで存分に遊びなさい」という“与えられるアミューズメント”に若者は辟易しています。人とふれあい、自分たちで発見できること。そんな体験ができるなら、少ないお金をかけてでも遠い地方まで出かけて行きます。そして、その場所で素敵な思い出を持ち帰ることができれば、その場所を何度も訪れるリピーターになるかもしれない。そう思います。

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豊島には、アート以外にも美しい海を見渡す棚田や島民のあたたかい人柄、美味しい食べモノなど、魅力がいっぱいあります。「この島の宝を体験しに来てください!」とより多くの人に伝えることができれば、もっと若者が島を訪れるのではないでしょうか。
僕は今年の秋、一般参加ができるという棚田のお米の収穫を手伝いに行ってみたいと思っています。

次回へ続く>>



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